先物取引の基礎(つめかえし取引)

前回のブログからだいぶ時間が経ってしまいましたが、今回は前回の続き的なもので先物取引について書いていきたいと思います。

先物取引とは「ある物(原資産)を将来のある日(期日・限月)にあらかじめ決められた価格(先物価格)で売る・買う約束」の事です。オプション取引と大きく異なる点は先物取引は権利ではなく義務ということでしたね。

○つめかえし取引

デリバティブの基礎について書いた時に「つめかえし取引」について解説すると書きました。その理由は先物取引を理解するには今の金融取引における先物取引を解説よりも堂島米会所で行われた「つめかえし取引」を理解した方が先物取引の本質を見る事ができると思うからです。

では、そもそもなぜつめかえし取引は生まれたのでしょうか。

当時の米は貨幣と同じ役割を持っており、重要な流通市場でした。市場が小さい時は米俵で取引をしていましたが、市場が大きくなるにつれて現物でのやり取りは大変になり、そこで「米手形」を発行することにしました。この米手形というのは「この米をいくらで交換できる」ということが記載され、証券としての性質をもっていました。

しかし、ここで1つ問題が起きました。価格の変動です。分かりやすいように現代風に書いてしまいますが、例えば、ある米を今日の相場で5キロ1,000円の米手形を買ったとします。しかし、実際に現物を取引する日の相場は5キロ800円でした。となると、200円損してしまいます。5キロ1,500円になれば得もしますが、もし、5キロ500円になればさらに損をしてしまいます。また、取引額が大きくなればなるほどさらに損失は膨らんでしまいます。

そこで、損をしないためにはどうすれば良いかと考え、編み出されたのが「つめかえし取引」です。

それでは、つめかえし取引とはどのようなものかを解説していきたいと思います。つめかえし取引は現物の取引がない契約取引です。内容としては、「米手形を今日の相場で売ったのと同時に、その米手形を米手形の取引日の相場で買い戻します。」というものです。言葉だけでは分かりづらいと思うので、実際に数値に当てはめてみましょう。前提条件として契約時の仕入価格が800円、市場価格が1,000円というケースで考えてみたいと思います。

・取引日の価格が1,500円の場合

まずは、取引日の価格が上がったケースで考えて行きます。下の図は実際の取引とつめかえし取引を行った場合について簡単に書いたものです。

実際の取引は800円で仕入れたものを取引日の1,500円で販売したので700円の利益があります。しかし、つめかえし取引の方を見てみると契約時の価格は1,000円なので1,000円は資金的には収入となりますが、取引日の価格で買い戻す契約をしているので1,500円の出費になってしまいます。そうなると、結果的に500円損をしてしまいます。せっかく700円の利益がでたのにつめかえし取引をやったことで利益が200となってしまいました。損をしないための仕組みが、実質的に500円の損を生んでしまっていることになります。

では、なぜこんな取引をするのか。次に取引日価格が500円に下がった場合について見ていきます。

・取引日の価格が500円の場合

先ほどは取引日の価格が上がった場合についてみました。次は取引日の価格が下がった場合について見ていきたいと思います。こちらも図を見ながら簡単に見ていきます。

取引日の価格が下がった場合、見て分かる通り300円の損をしてしまいます。しかし、つめかえし取引を見てみると、契約時に1,000円で売る約束をしているので1,000円の収入があります。取引日の価格で買い戻す契約をしていても500円の利益が生まれることになります。したがって、結果的にはさきほどと同じ200円の利益がでます。

2つのケースを見て分かるように、つめかえし取引は大きな利益がでない代わりに大きな損もしなくなることで安定した利益を生むことができるようになるわけです。

このように、先物取引はもともとリスクヘッジの仕組みとして出来たものだと考えられますね。江戸時代にこんな仕組みがあったというか、こんな仕組みを考えた昔の人ってすごいですよね。

ちょっと先物取引について歴史的な部分について書いてみましたが、最近では金融における先物のイメージの方が強いですよね。先物取引はリスクヘッジで損をしないための仕組みでしたが、先物取引で大きな損をしている人もいます。でもそれは金融における先物で投資として行っている場合です。

金融における先物は「先物とは、ある物を将来のある日にあらかじめ決められた価格で売る(買う)約束」という定義に加えて①取引所で行い、②反対売買することができ、③差金決済を行うもので、④証拠金を差し入れる必要があるものです。また、特徴として日々の値洗いをするというものもあります。日々の値洗いとは、簡単に行ってしまえば、毎日時価評価をして差益を確定するものです。そして、値洗いによって確定した損益は証拠金により差金決済されます。そして最終的には反対売買することで取引を終わらせることができ、利益を確定させることができます。

金融における先物は、このような仕組みになっているので先物取引の定義にプラスして4つの条件が必要になってくるわけです。

金融における先物取引は最後にざっと書いてしまいましたが、先物取引の根本は書いたつもりです。先物は久しぶりに触れた内容だったので改めて理解し直したって感じでしたね。もっと金融における先物についてやりたい人は、このブログを読んでから他の解説のサイトなどに行くと良いかもしれませんね。個人的には、ドットコモディディがオススメです。

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参考
大学の授業
ドットコモディディ
先物新報
日本ユニコム