流動資産と固定資産

今回は貸借対照表に関連する流動資産と固定資産について書いていきます。

資産は流動資産と固定資産の2つに区分されています。現金や売掛金など比較的動きが多いのが流動資産で土地や建物などが固定資産と区分されます。イメージでなんとなく分かるかもしれませんが、どのような基準で区分されているかを書いていきたいと思います。ちなみに、これに関しては企業会計原則注16に書いてあったと思います。

流動資産と固定資産に区分する際に2つの基準があります。それが「正常営業循環基準」と「1年基準」です。そして、流動資産か固定資産を判断するときは、「正常営業循環規準」→「1年基準」順で判断していきます。それでは、それぞれがどんなものか簡単に見て行きましょう。

●正常営業循環基準
正常営業循環基準というのは言葉で何となくイメージできるかもしれませんが、一応書いておきます。正常営業循環基準は商業で言えば「仕入れ→販売→代金回収→仕入れ」というような営業活動で一連の流れの中に入っているかどうかを判断する基準です。そして、この営業活動の一連の流れの中に入っていれば流動資産となります。
例えば、商品や売掛金、受取手形、現金などが考えられます。

●1年基準(ワン・イヤー・ルール)
1年基準は文字通り、1年を基準にその資産を現金化するかどうかによって、流動資産か固定資産かを判断する基準です。最初にちらっと書いたのですが、まず正常営業循環基準で基準に適合しているかを確認し、そして適合していなければこの1年基準で流動資産か固定資産かを判断します。ちなみに、そもそも現金化することを目的としてない場合は固定資産となります。
例えば、貸付金などは1年以内に返済される場合は流動資産になります。しかし、貸付金が1年以上先に返済される予定であれば、長期貸付金として固定資産という扱いになります。
また、有価証券もよくトピックスになったりしますね。有価証券は保有している目的によってちょっと変わってきます。例えば、売買目的で株式を保有しているなら流動資産。また、満期が1年以内の有価証券も流動資産となります。しかし、満期が1年以上先に満期が来る有価証券ならば固定資産、また、他企業を支配する目的で保有している有価証券も固定資産となります。
もちろん、建物や土地、備品などは販売する目的で保有しているわけではないので固定資産となりますね。

2つの基準を自分なりに説明するのであればこんな感じでしょうか。また、固定資産は3つに分けることができます。これについても簡単に触れておきます。

・有形固定資産→建物や土地、備品など実際に目に見える資産のことです。
・無形固定資産→特許権や借地権、のれんなど目には見えない資産のことです。
・投資その他の資産→長期貸付金や満期保有目的有価証券、関連会社株式など1年以上保有するものや支配目的の有価証券などのことです。

ちょっとだけ余談になってしまいますが、とくに1年基準は検定などの引っかけ問題になってたりします。私はこれでよく間違えていましたね。精算表の問題でそのまま固定資産で処理していたけど、実は1年以内になるから流動資産にしないといけなっかった。みたいな感じです。簿記検定とかやっていれば経験はあると思います。

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参考文献
・片山覚 他『入門会計学 財務諸表を読むためのエッセンス』(実教出版)

財務諸表の4表

今回は財務諸表の4表について簡単に書いていこうと思います。貸借対照表や損益計算書について書こうと思ったのですが、先に基本的な4表について書いておいて、それぞれについて書いていった方が個人的に分かりやすいと思ったからです。いや、内容について書いていくのが楽になると思ったからです。

タイトルに「財務諸表の4表」と書きましたが、いきなりこんなことを書かれても「何それ?」ってなると思います。財務諸表の4表は「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」「キャッシュフロー計算書」のことを言います。これらは、金融商品取引法によって作成が義務付けられています。また、会社法では、計算書類と表現されキャッシュフロー計算書を除く「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」の作成が義務付けられています。ちなみに、この金融商品取引法と会社法の違いは何かと言われれば、会社法はすべての企業が対象となり、金融商品取引法は主に上場企業が対象になるところが違いです。

それでは、財務諸表の4表についてそれぞれ簡単に見て行きましょう。深い内容はそれぞれの財務諸表について1つ1つ書いていこうと考えているのでその時に書いていきます。

●貸借対照表(B/S:Balance sheet)
貸借対象表は、一定の時点の財政状態を明らかにするために作成されるものです。大きく分けて資産・負債・純資産(自己資本)の3つで構成されています。本来なら定義などがありますが、今回は私の感覚的なイメージでそれぞれを書いていきたいと思います。
資産とは、企業が保有していて、それが金銭的に判断できる(貨幣的測定なんて表現されます)ものです。
負債とは、イメージ的にいえば借金でしょう。将来的に払わなければならないものです。
純資産とは、資産から資本を引いて、貨幣的考えると実質的に企業はこのくらいの資本を持っているでしょう。という感じです。ちなみに、この考え方は、資本主理論という考え方です。会計主体論のところで書いてありますが、負債と純資産の合計が資産と考える企業主体理論という考え方もあります。

●損益計算書(P/L:Profit & Loss Statement)
損益計算書は、一定期間の経営成績を明らかにするために作成されるものです。損益計算書は収益・費用・利益によって構成されています。損益計算書は単純に考えるとイメージしやすいですね。例えば、100円で物が売れた→売るために80円かかった→じゃ、利益20円だね。って感じです。損益計算書はこのようなことを一定期間やって、最終的にはこのくらいになりましたよっていう財務諸表です。

●株主資本等変動計算書
株主資本等変動計算書は、ものすごいざっくりと書いてしまいますが、「貸借対照表の純資産が規制緩和とかで複雑になったし、書くことが多くなったから動きが分かるように作ろうぜ」って感じです。これについても、ちゃんと書いていこうと思っているのでここではこのくらいにしておきます。

●キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フロー計算書は、貸借対照表や損益計算書では把握できなかった資金の流れを表したものになります。貸借対照表や損益計算書上では良いのに倒産してしまう「黒字倒産」というものがあります。これは、利益があるにも関わらず資金がないため支払いができず倒産してしまうケースです。このようなこともあるので資金の流れをしっかり把握しようということで作成されます。
キャッシュ・フロー計算書は「営業活動によるキャッシュ・フロー」「投資活動によるキャッシュ・フロー」「財務活動によるキャッシュ・フロー」の3つの区分されています。詳しいことは、キャッシュ・フロー計算書について書くときに書きます。

財務諸表には、このように4つ大事なものがあります。今回は簡単に書いていきましたが、それぞれ1つずつ書いていこうと思いますが、簡単にイメージを作っておくことは意外と大事になると私は思っています。正直、それぞれを見て行くと意外と難しい内容となっています。なので、例えば貸借対照表について書くときも、一回に書かないで分けて書いていこうと考えています。まぁ、会計について勉強したことがある人は分かると思いますが・・・。

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参考文献
・某大手通信教育講座中小企業診断士テキスト
・片山覚 他『入門会計学 財務諸表を読むためのエッセンス』(実教出版)
・経営能力開発センター編『経営学検定試験公式テキスト<4>経営財務』(中央経済社)
・桜井勝久著「財務会計論講義』(中央経済社)

企業ドメインの基礎

経営学におけるドメインというと「事業ドメイン」と「企業ドメイン」があると思いますが、今回は「企業ドメイン」について書いていこうと思います。まぁ、突然「企業ドメイン」っていっても分からないと思うのでいつも通り、企業ドメインとはなにかを簡単に書いてから、中身に入っていきたいと思います。

企業ドメインを簡単にいうと、企業の事業領域を定義していくことであると言えます。その領域は、将来的な事業や戦略の領域を含めて考えるものになります。そして、企業ドメインを定めることによって、企業の指針というか方向性というか、そんなものを決めることができ、方向性をしっかりしたうえで今後の戦略とかを考えることができるようになります。

最初に簡単に書いみましたが、まぁ、よく分からないかもしれませんね。私も無知でこれを読んだら、「なんのこっちゃ」って思うと思います。と、いうことで中身に入っていきましょう。

まず、企業ドメインの意義について考えてみましょう。

企業のドメインを考えることは、その企業のコンセプトを決定し、さらにはどのような分野でやっていくことかを決定することになります。つまり、事業領域を決定することになりますね。これを決めることによって、例えば、企業が多角化をする時の判断材料にもなります。「可能ならば、いろんな多角化をしてリスクの分散をする方が良いのでは?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。ドメインを明確にしないと企業は方向性を見失ってしまいます。そして、経営資源の配分やこれから蓄積していくべき経営資源が明確にならなくなる可能性があります。こうなってしまうと、せっかく持っている強みなどを活かせなくなってしまうかもしれません。ユニクロだって、野菜事業をやって失敗していますしね。こんなことも頭に入れながら、ドメインを定義する意義を私の持っている本では3つに分けて考えているので、ここでも3つに分けて考えてみましょう。

まず1つ目は、「組織が意思決定をする際の指針を与えることができる。」と、いうことです。企業ドメインを決めないで考えてしまうと意思決定する際に浅く広い考えで決定しかねません。多様な変化が起こっている世の中で、浅く広い情報での意思決定は少し危険な感じがしますよね。しかし、事業領域を限定しいればその事業領域に対して深い情報をを収集することができ、適切な判断ができる可能性が高くなります。また、事業を展開していく時の指針にもなります。もし、企業ドメインがなければ方向性を見失ってしまい、一貫性のある意思決定ができなくなってしまいます。

2つ目は、「企業の経営資源の配分や蓄積に指針を与えることできる。」と、いうことです。企業ドメインで事業領域を限定することで、これからどのような経営資源が必要であるかを明らかにすることができ、さらには、その企業の強みをさらに強化できるようになります。これは、企業ドメインを限定することでその企業の方向性にあった経営資源の蓄積ができ、同時に配分が可能となるからです。

そして3つ目は、「組織に一体感をつくることができる。」と、いうことです。組織は、特に多角化か進んでいる組織は同じ組織であっても別々の組織で働いているような感覚を持ちます。実際に私は、人事異動で部門を異動した時に、あたかも転職したような感覚を持ちました。そのぐらい、企業風土が違ったのです。このような場合に、企業ドメインを定義しておくと、部門ごとにやっていることは違うかもしれないけど、同じ目標に向かって仕事していると思わせることができます。そして、事業間の協力や範囲の経済の実現を可能にしていきます。

これが企業ドメインを定義する意義です。次に、企業ドメインを定義する際のアプローチについて考えてみます。ドメインを定義するアプローチには3つあげることができます。これも順番に書いていきます。

まず1つ目は、機能による定義です。これは、現在行っている事業などでとらえるものです。その行っている事業が市場や社会に対してどのような機能をもたらしているかを考えて定義していきます。この場合、将来のどのような展開をしていくかを考え、潜在的ものも考えて広く考えることができるため戦略的な観点からは望ましいといえます。
例えば、レビットが1960年にハーバード・ビジネスレビュー詩に掲載した論文で、アメリカの鉄道会社の事業ドメインを「鉄道事業」と定義してしまったため、他の輸送手段への多角化の機会を逃してしまい、衰退してしまったという主張はよく知られています。もし、もうちょっと広く企業ドメインを定義していれば、多角化が成功していたかもしれません。

2つ目は市場と技術や能力によって定義するものです。市場に対して持っている技術や能力を活かし将来の発展の方向性をドメインとするものです。このアプローチで企業ドメインを定義するのは、最近では、市場が成熟化し、顧客の多様なニーズがあることから難しくなってきてます。例をあげるのであれば、松下電器が一時期標榜していた「ヒューマン・エレクトロニクス」はその1つと言えるかもしれません。

そして3つ目は、顧客層、顧客機能、技術にの3つにより定義するものです。これにエーベルによって提示されたもので、現在のアプローチ方法として普及しているものですね。これは、だれに(顧客層)、何を(顧客層)、どのように(技術)に提供するかという感じで定義していきます。これにより、戦略的にドメインを設定できる感じがしますね。

企業ドメインについてざっと書きましたが、正直、事業ドメインを考えるのは容易ではありません。広く事業領域を定義してしまうと方向性を見失ってしまい、適切な経営資源の蓄積や配分ができなくなってしまったり、逆に狭すぎるとアメリカの鉄道会社みたいに機会を逃してしまうかもしれません。
アプローチ方法も3つ書いてみましたが、現在では基本的に3つ目を使うのが一般的みたいです。ですので、今回も「企業ドメインの基礎」というタイトルをつけてみました。たぶん調べてみると3つ目のが多く出てくると思うので、このブログ読んでから他の調べてみると良いかもしれませんね。

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参考文献
・某大手通信教育講座中小企業診断士テキスト
・綱倉久永・新宅純二郎著『経営戦略入門』(日本経済新聞出版社)
・経営能力開発センター編『経営学検定試験公式テキスト<2>マネジメント』(中央経済社)
・伊丹敬之・加護野忠男著『ゼミナール経営学入門』(日本経済新聞社)