売上原価の計上(払出原価)

前回は売上原価について記帳方法について書いてみました。

売上原価の計上(記帳方法)

今回はその金額について書いていこうと思います。これは企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」で公表されています。このような基準があるとちょっと難しく感じるかもしれませんけど、簡単に言ってしまえば、商品をいくらで払い出すかってことです。
商品を在庫していれば同じ商品でも仕入金額を異なることがありますし、例えば1個仕入れても10個仕入れても送料が同じだった場合でも仕入金額が変ってしまいます。そして、金額が異なる同じ商品を払い出す場合の単価を考えるのがここでの話です。

ここでは、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」6-2で棚卸資産の評価方法ってことで限定列挙されているので、その評価方法について1つずつ書いていきたいと思います。ちなみに、それぞれの「」の中は会計基準に記載されている文言です。

(1)個別法
「取得原価の異なる棚卸資産を区別して記録し、その個々の実際原価によって期末棚卸資産の価額を算定する方法」というものです。この方法は、名前の通り個別で管理していきます。比較的高価なものであるとか単価差が激しいものが対象と考えられ、宝石とは骨董品などに合理性があります。ただし、大量に生産されていたり販売しているものにはかなりの手間になってしまうので現実的ではありません。

(2)先入先出法
「最も古く取得されたものから順次払出しが行われ、期末棚卸資産は最も新しく取得されたものからなるとみなして期末棚卸資産の価額を算定する方法」というものです。この方法は、商品を売る場合の基本的な流れを想像して頂ければイメージしやすいと思います。普通に考えて商品を陳列する時は古いものを手前に出して新しいものを置くと思います。一般的に古くなると商品の価値は下がってしまいます。教えて貰わなくても感覚的に商品を陳列する時は新しいものを手前に並べることは普通やらないですもんね。この基本的な商品の動きにあっているのがこの先入先出方式です。簡単に動きのイメージを書いてみたいと思います。

ここでは取り扱いませんが、私が簿記を勉強していた時は「後入先出法」というものがありました。これは後に仕入れた商品を先に出すという方式です。良く分からないかもしれませんが、私が勉強をしたときのイメージとしては丸太とかを取り扱っている木材店で動かすのに大きな手間がかかるので、どんどん新しいものを在庫の上に置いてしまうため、後から仕入れた商品を先に出すしかない。って感じでイメージしていた気がしますが、今は認められていない処理なんで余談的な話ですね・・・。

(3)平均原価法
「取得した棚卸資産の平均原価を算出し、この平均原価によって期末棚卸資産の価額を算定する方法 なお、平均原価は、総平均法又は移動平均法によって算出する。」といことで、この方式は2つの方法があります。

・総平均法
総平均法は、1か月など期間を定めて期末に原価を算出する方法です。この方式では1回の計算で払出単価を算出するメリットはありますが、期末でないと売上原価が算定出来ないというデメリットがあります。こちらも簡単な動きのイメージを記載しておきます。

総平均法は期末にならないと払出単価が算定されないので、一時的に予定価格などを用いて払出しをします。そのため、期末に原価差額が発生し、これを売上原価や期末資産に配賦する必要があります。

・移動平均法
移動平均法は、仕入れの度に払出単価を計算していきます。これは総平均法とは違って払出単価の計算の手間がありますが、売上原価が確定しているので売上の際に売上原価を計上することが出来ます。こちらの流れも記載しておきます。ちなみに、端数があった方が分かりやすいと思ったので、小数点第2以下は四捨五入していますが、小数点以下を表示しています。

(4)売価還元法
「値入率等の類似性に基づく棚卸資産のグループごとの期末の売価合計額に、原価率を乗じて求めた金額を期末棚卸資産の価額とする方法。売価還元法は、取扱品種の極めて多い小売業等の業種における棚卸資産の評価に適用される。」というものです。書いてある通り取り扱っている商品が多い百貨店などを想定しており、取り扱い商品が多いと売上原価を算出するには大量の事務作業が必要となるので、その負担軽減の目的で考案されたのがこの方式です。
このように書くとちょっと難しいですが、簡単に言ってしまえば、グルーピングしてそれに商品の売価に原価率を乗じて算定する方法です。ちなみに、原価率については「連続意見書第四」が規定するものと「法人税法」が規定するものがあります。参考までにですが計算式は以下の通りです。

以上の4つが現在認められている棚卸資産の評価方法です。この評価方法は「棚卸資産の評価方法は、事業の種類、棚卸資産の種類、その性質及びその使用方法等を考慮した区分ごとに選択し、継続して適用しなければならない。 」と規定されているように、1度採用すると継続して適用しなければなりません。なぜなら、例で示した動きのイメージを見て頂ければ分かるのですが出庫の単価が異なっています。出庫の金額は売上原価ですので、自由に変えることが出来ると利益操作が出来てしまうためです。

もっと勉強すると分かるのですが、払出原価の算定方法はほかにもあります。ただ、ここでは企業会計基準に記載されているもののみを取り上げて書いていますので、会計について勉強する人や興味がある方は調べてみると良いと思います。深くまで勉強しようと思ってない人は、この程度で良いかもしれませんね。

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参考文献
・桜井久勝著「財務会計講義」中央経済社
・改正企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準委員会ホームページ)

売上原価の計上(記帳方法)

今回は売上原価について書いていきたいと思います。そもそも売上原価って何かと聞かれれば、一言で言えば「売上の獲得に直接的に貢献した費用項目」となるでしょう。会計について勉強をしたことがある人は分かると思いますが、たぶん私のブログを読んでいる時点でそういう人は少ないと思います。
簡単な例をあげれば商品を仕入れて売っている場合はその仕入金額、商品を作っている場合はその商品を作るために掛かった費用とかそんなものです。

なお、ここでは商品を作っている場合は原価の算定方法を書いていく必要があると思いますので、単純に商品を仕入れて売る場合をイメージして書いていきたいと思います。まずは売上原価をどのように計上するかにあたって、簿記の話になってしまいますが、商品売買取引の記帳方法として4つの方法があるのでそれを簡単にですが書いていきたいと思います。

例として1,000円で仕入れたものを1,500円で販売したケースで考えてみます。

●分記法
分記法は商品を仕入れた際、その商品で記帳していきます。そして売上の際も商品自体を減らし、利益(商品販売益)とともに記帳していきます。この方法は個別に行っていくので販売の都度利益額を明らかにすることができ、決算整理仕訳を行わずに済みます。ただし、商品有高帳などのを細かく付けなければならず、多くの商品を扱っていたり、取引回数も多くなってくると現実的にこれを行える企業は限られてしまいます。
ちなみにこの処理の個人的に思うデメリットとして、帳簿を見ればすぐに利益が見ることができますが、売上を見ることができないと言うことです。計算すれば算出することはできますが、ちょっと分析とかしようと思ったときにめんどくさそうですね。

それでは、どのような仕訳を行うか簡単に記載しておきます。

参考までにですが、分記法での売上は下記のような式で出すことができます。

貸方商品勘定(売上原価)+ 商品販売益 = 売上

これは完全に私見になってしますが、昔は100点の商品があったらすべての商品有高帳を作って管理しなければならなかったので現実的ではなかったかもしれませんが、ITが発展している今の時代であれば商品ごとにPOS管理をして、システム上で商品有高帳を自動で作成すれば可能ではあるような気がします。

●売上原価対立法
分記法のデメリットで売上が見えないっていうのがありました。そこで、この分記法の考え方に近くて売上がみえる考え方で売上原価対立法というものがあります。その仕訳は下記のようになります。これであれば、売上と売上原価を見ることができますね。

このようにすれば、売上と売上原価みえるうえ、ちょっと難しい話になってしまいますが、発生主義会計の基本原則に合致した処理方法と言えます。

●三分割法
三分割法は、商品の取引を「繰越勘定」「仕入勘定」「売上勘定」を3つに分けて記帳していきます。この方式は簿記検定等を勉強する時にメインで勉強するものでしょう。三分割法は決算時に決算整理仕訳を行って売上原価を算出します。分記法はその都度売上原価を出しますが、この方法は基本的に期末に一括して計上します。簿記検定等を勉強した人は決算整理仕訳の時に「しーくりくりし」なんて覚えたと思います。これも仕訳を記載しますが、たぶん勉強する時は掛取引になると思うので、ここでも掛取引で書いていこうと思います。

仕訳は上記のようになりますが、ここから売上原価を算出するには下記の式で行います。

期首繰越商品+仕入高-期末商品棚卸高=売上原価

この式に当てはめると、3,000円(期首商品)+1,000円(仕入高)-3,000円(期末商品)=1,000円(売上原価)

となります。

●総記法
個人的にあまり馴染みのない記帳方法ですね。ここは詳しく書ける自信がないので参考程度に書いておきます。基本的な考え方は分記法と近いと思いますが、販売した際の処理が異なります。総記法の場合、分記法で「商品」と「商品販売益」を分けて処理しますが、これを商品勘定でまとめて貸方に書くというものです。なぜそんな処理するかは・・・正直分かりません。ただ、一応仕訳を記載しておきます。

特徴としては、決算時に商品勘定の差額が商品販売益となることでしょうか。簡単に仕訳を書くとこんな感じになるというのは分かりますが、レベル的には日商簿記検定1級の範囲なのでちょっと難しいです。私自身、検定で総記法が出てきたらたぶん解けないと思いますので詳しい説明は省略させて頂きます。

これらが売上原価を考える際に最低限必要な簿記の知識かもしれませんね。このブログでは簿記と会計を分けて考えているので、簿記検定の問題を解く知識としては足りないと思います。ただ、売上原価について考えるためには必要最低限の知識だと思って今回は書いてみました。

今回は売上原価を学ぶ上でどのように記帳しているかを中心に書いてみました。次回は払出単価と言ったりしますが、その金額について書いていこうと思っています。

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参考文献
・桜井久勝著「財務会計講義」中央経済社
・某大手専門学校日商簿記検定テキスト