今回はPPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)について書いていこうと思います。
PPMという経営戦略は大企業を中心に経営リスクを分散させるために多角化を進めて事業を展開してきましたが、もちろんこの中には投資に見合う利益が得られないこともあります。このような時に撤退を含めた対策を講じる必要が出てきます。ただ企業自らこの判断をすることは簡単そうに見えて難しいため、このような解決策としてボストン・コンサルティング・グループが開発した戦略手法です。PPMでは「経験曲線及びマーケットシェア(市場占有率)」と「製品ライフサイクル」の2つの分析視点を新たに与えています。
1.経験曲線
経験曲線は累積生産量が増加すると単位当たりのコストが下がるというものです。本来なら簡易的なグラフなどで示した方が分かりやすいかもしれませんが、省略します。ざっくりとイメージして頂くのであれば右下がりのグラフをイメージして頂ければと思います。
この経験曲線はほとんどの産業に例外なく見られ、ボストン・コンサルティング・グループではその理由として①習熟効果、②規模の経済性、③技術の改善、④デザインや工程の改善をあげています。簡単に言ってしまえば、経験を積めば積むほど慣れてくるし色々改善や工夫もしていくと思います。また、作れば作るほど1個当たりにかかる固定費も分散されていくこともあって、1個当たりの単位は下がっていくのは容易にイメージできると思います。そして、製造コストが相対的に低くなれば、競争上有利にもなります。
2.製品ライフサイクル
製品ライフサイクルというのは製品やサービスを市場に投入してから撤退するまでの周期で、導入期⇒成長期⇒成熟期⇒衰退期へと移行することにともなって、需要量も増減するとともに、売上高と利益が時系列的に推移する考え方を言います。各期の特徴は下記のようになります。
①導入期
導入期は市場に存在していなかったモノを市場に導入した時です。この段階では顧客や競争業者は価値や潜在力を理解していないため、将来の需要動向も不明確です。そのため、売上高の増加ピッチはなかなか進みません。また、販売促進費や流通コストなどが大きくなるため利益も出しにくいという特徴もあります。
②成長期
成長期は製品やサービスが顧客に受け入れられて売上高が急速に増加します。この段階では需要予測の精度も高まり、相当規模の市場が形成される可能性が明らかになります。このため、多くの利益を獲得できる機会が顕在化し、市場に参入する企業も増え競争が激しくなります。供給量も多くなりますが、需要が伸びている限り価格はあまり変動しません。この段階では、増加する競合他社に対して差別化をするため機能や品質を向上させるよな費用が必要になります。
③成熟期
製品やサービスが成長率や売上高の伸びが落ち着いて総需要がピークになり、需要の相当部分が買い替え需要が占めます。また、顧客の購買意思決定の過程も単純化します。成熟期は成長期や導入時より長く続き同業他社との棲み分けが進み、各企業の販売量も安定的になり、成長率や売上高がピークになると価格の引き下げなどがあり、利益は減少していきます。
④衰退期
衰退期は需要が減少してく時期で、代替製品などが登場します。売上高や利益も減少し市場の魅力も下がっていきます。撤退や販売中止などの手段を速やかに行う必要もでてきます。
最後に、このあたりの勉強をすると出てる図を参考までに貼っておきます。
以上の2点を踏まえて、本題のPPMについて書いていこうと思います。
PPMは製品や事業に関する資金の流出入は、相対的市場成長率と相対的市場占有率(シェア)を組み合わせによって決まっているというものです。相対的市場成長率は製品ライフサイクル上の位置が基本となり、相対的市場占有率は経験曲線における累積生産量の大小を基本とし、その結果として「花形」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の4つの象限分類されます。それぞれの象限には以下の特性が確認されています。
①花形
市場成長率も市場占有率も高い状態です。成長期であって資金流入も大きいですが、それと同時に先行投資などの資金投下も必要とするため、安定的で潤沢な利益を生み出すとは言い難いものです。ただ、市場成長率が尾部くなり市場占有率を維持することが出来れば、金のなる木になる可能性があります。
②金のなる木
市場成長率は低いが市場占有率は高い状態です。成熟期の状態であって将来的に大きな魅力はありませんが、投資の必要がなく市場占有率も高いことから高い収益があります。企業にとって主たる資金源になります。
③問題児
市場成長率は高いが市場占有率は低い状態です。成長期であり、将来への魅力は大きいものの市場占有率が低いので大きな投資が必要になります。ただ、大きい投資をしたところで金のなる木になって資金源になるか分からないものです。だから問題児って名前なんだと思います。
④負け犬
市場成長率も市場占有率も低い状態です。衰退期であり成長投資もいらないが資金の流入もあまり期待できません。将来的にも魅力がないので合理化や撤退を考えなければならない状態です。ただ、中にはマニアックな分野で競争力が少ないってことで、少しでも利益がでるならと残すことも1つの選択肢になり得ます。
このPPMの理想形は「金のなる木」で出来た資金を「問題児」に資金を投資して「花形」にする。そして、花形を成長させて「金のなる木」にするイメージです。もちろん、金のなる木で生まれた資金を花形に投資して市場成長率が低くなるまで市場占有率を維持するという戦略も考えられるはずです。
このPPMについても勉強すると良く出てくる図があるので、こちらも貼っておきます。ちなみに矢印も付けておきますが、これが資金の理想の流れです。花形は資金が流入になる可能性もあり、流出になってしまう可能性もあるので「増減」と記載してあります。
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参考文献
経営能力開発センター編『経営学検定試験公式テキスト<1>経営学の基本』(中央経済社)
伊丹敬之・加護野忠男著『ゼミナール経営学入門』(日本経済新聞社)
某大手通信講座 中小企業診断士テキスト