商業者の必要性

 今回は流通論の基礎的な内容になると思いますが、卸売業者や商社の存在意義について書いていこうと思います。

 まず、法人も個人もモノの組み合わせにより使っていくことが多いと思います。例えば、パソコン用ディスプレイはパソコンがないと使用することはありません。組み合わせによって価値が出てきます。つまり、消費活動というのはモノの集合によって行うことが多いということです。そして、消費目的に沿って意識的に形成された財の集合を「アソートメント(assortment)」といいます。
 このアソートメントをアメリカの商学者のロー・オルダーソンは「形態付与」「適合調整」「品揃え形成」の3つに分類しました。形態付与と適合調整は生産領域に含まれますが、品揃え形成に関しては、交換や売買を通じて行われるものなので流通のプロセスになります。

 この品揃え形成について簡単なイメージを持ってもらうのであれば、ご飯の買い出しをイメージしてもらうと良いかもしれません。大学の講義の時にもこのような例だった気がします。
 例えば、鶏肉・玉ねぎ・卵・お米を買いに行こう思います。これを買うとき、お肉屋さん・八百屋さん・卵屋さん・お米屋さん、というように4つの店に行くなるとちょっと面倒くさいと思うかもしれません。ただ、これらをスーパーで買うと1か所で済みます。このとき4つの店で買う合計金額よりスーパーの方がちょっと高くなったとしても、効率などを考えて自分にとってメリットがあればスーパーだけで済ませるという選択もできると思います。あくまでもイメージですが品揃え形成はこのような考え方でとりあえずは大丈夫だと思います。これはちょっと余談ですが、ここでの例は買い手が最終消費者ですので「最終アソートメント」と言ったりします。

 

 さて、ここから本題になっていきますが商業者である卸売業者や商社の存在意義について私の私見も交えながら書いていきたいと思います。ちなみに、ここから書いていくのは「中間アソートメント」っていうものです。

 

 1つ目に挙げらるのは「取引数削減の原理」です。まずは流通論を勉強すると必ずって言ってよいほどよく見る図を貼っておきます。

 この状態が商業者を経由しないでそれぞれが取引している図になります。取引をそれぞれ行っているのでちょっとごちゃごちゃした印象ですね。次の図が商業者が入ったになります。

 かなりすっきりとした印象になったと思います。この商業者が卸売業者とか商社です。この2つ図を見るだけでも取引数が減ったと言うことが分かると思います。

 よく、直接取引をした方が中間業者を通さないのでマージンを取られないので安く仕入れる事が出来て良いのではないかという意見があったりします。ただ、商業者を入れることで取引数が減り、結果的に流通コストの節約になりますし、最初の方に書かせてもらったように品揃え形成の効果により必要なものをまとめて納品してもらえます。
 また、取引数が減ることによって伝票の数も減らすことができ、問い合わせ窓口も減らすことができます。これは、仕事をして感じている部分でもありますが、取引先からの伝票は100%正確ってわけではありませんし、商品に不良品があったり、納品ミスがあったりすると直接取引では商品ごとのメーカーに問い合わせをしなければなりません。ただ、商業者がいればそこに問い合わせれば済みます。

 

 2つ目に挙げられるのは「情報縮約・整合の原理」です。中間業者である商業者には生産者側からも消費者側からも色んな情報が入ってきます。その情報を整理すればそれぞれの情報を比較することもできます。また、自らの責任で仕入及び販売をしていくので商業者の品揃えは消費者のニーズを反映したものになり、生産者の供給可能性と消費者の需要を商業者の品揃えに鏡のように反映されることからミラー効果と呼ばれたりします。商業者はこのような情報収集や分析を自ら行うことになるので、消費者の情報収集や分析に関するコストが削減されたりもします。

 

 3つ目に挙げるのは「集中貯蔵の原理」です。これは、簡単に言ってしまえば在庫に関するものです。生産者にとって需要は不確実なものになります。急な需要増に対応するためにはある程度在庫を持つ必要がありますが、生産者は生産物全体の在庫をもつ必要になるため、かなりの在庫規模になってしまう可能性があります。この時に、商業者は自ら持っている情報の中から生産者から一部の商品の在庫を集中して持つことができます。これにより生産者側からするとほとんどが買い取りだと思いますから、商業者が在庫してくれることで大きなリスクなく在庫コストなどの流通コストが下がることになります。

 

 このようにみると、確かに直接取引した方が仕入金額が安くなるので良いかもしれませんが、商業者をいれるメリットも見えてくると思います。また、商業者が間に入ることで取引を拡大できる可能性もあります。法人同士ですと、新たな取引になると信用できるかどうか調査を行うなどちょっと面倒くさいことがあったりしますが、このときに商業者の取引先であれば、生産者側からしたら商業者との取引だけになるので特にリスクなく取引することができます。こういうところもメリットと言えますね。

 さらに言えば、規模が大きくなればなるほど、商業者は必然的に多くの情報が集まってきます。そうすると、業界の動向などの情報も入ってくるので商品だけでなく情報屋としての役割もあり、商業者にとって大きな武器にもなっている個人的には思っています。

 このように見ていくと商業者がいた方がメリットがあり、必要な存在だと言えるので現代でも商売として成り立っているのだと思います。

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参考文献
 ・渡辺達郎他著『流通論をつかむ』(有斐閣)