今回は日本型企業システムについて書いていこうと思います。これは日本人が分析したのではなく、アメリカの経営学者ジェイムズ・アレグレンによって「日本の経営」として紹介されたみたいです。多少私見も混じっていますが、主な特徴として下記の4つが挙げられると思います。
- 稟議的経営
- メイン・バンク制度
- 日本型企業統治
- 雇用構造の特徴
それでは1つずつ簡単に書いていこうと思います。
1.稟議的経営
稟議的経営は日本独自の意思決定方式で「集団主義経営」の特徴を表しています。
第1プロセス:起案(下部部署)
↓
第2プロセス:回議(関係部署)
↓
第3プロセス:決裁・承認(経営層または管理層)
↓
第4プロセス:記録
これが稟議の基本的な流れです。
第1プロセスの起案については、企業の下部の階層から行われるボトムアップ方式の仕組みで下から上層部へいわゆる「お伺い」として考え出されたものです。
第2プロセスの回議については、集団組織による稟議の練り上げを意味しています。回議するプロセスは、他部署との間でも行われ各関係部署間の意思疎通に役立っており、この方法は時間がかかるので意思決定を遅らせる原因にもなっていると思いますが、日本の経営組織の集団主義に基づく一体感を持たせるのに役立っている側面もあります。
第3プロセスの決裁・承認については、上層部の経営層または管理層が判断するプロセスであり、下部から提案された案を「捺印」という日本の特徴的な行為によって決裁・承認をします。
第4プロセスの記録については、起案された稟議書には内容だけでなく担当者や関係部署の長の捺印が記録されており保存文書として扱われます。そして審査機関としての総務の推進にかかわる記録が文書で証明されます。
流れの中身について簡単に書てみましたが、働き始めて稟議を作る時ってここまで考えることはまずないでしょうね。このように稟議の意味が分からなくても作れますから。
2.メイン・バンク制度
簡単に言ってしまえば、贔屓にしている銀行があるということです。基本的には融資など一番取引している銀行がそうなります。このメイン・バンク制度は3つの機能をあげることが出来ます。
●情報の非対称性に伴うエージェンシーコストの引き下げ
銀行はお金を扱っているので色んな情報が集まります。そこでメイン・バンクがモニタリングすることで他の融資者などとの企業の情報の非対称性を縮小させることが出来ます。
●リスクに対する保険
経営危機時にメイン・バンクが資金供給などで救済します。
●各種情報交換
メイン・バンクは助言ができ、お互いに取引に斡旋することが出来ます。
3.日本型企業統治
まず、企業統治(コーポレートガバナンス)は企業を対象に「誰のために、どのようにチェック機能を働かせるか」というようなイメージです。
日本型企業システムではステークホルダーの中でも従業員が大きな影響を与えてきたと言われています。これは経営者が一体となって経営活動する組織体であり、集団主義の考え方がリードする企業文化と言えます。ちなみに、アメリカの企業文化では株主至上主義ですので、株主が大きな影響を与えています。
4.雇用構造の特徴
日本の雇用の特徴としては
- 終身雇用制度
- 年功序列
- 企業内労働組合
があります。なんとなくわかると思いますが、簡単に説明しておこうと思います。
●終身雇用制度
終身雇用制度とは、正社員として採用された場合に経営上の大きな困難や従業員の不手際がない限り定年まで雇用される暗黙の契約です。雇用が長期になれば技術やノウハウを蓄積でき、計画的な人員配置が可能となりますが、リストラ等の人員整理が難しくなるというデメリットがあります。
●年功序列
終身雇用制度と密接に関連しているのが年功序列です。年齢に応じて賃金や地位が上がっていく仕組みのことです。年齢の序列の賃金や地位の逆転を防ぐことが出来るますが、若くてやる気のある人のモチベーションが下がってしまうデメリットがあります。
●企業別組合
長期雇用関係が結ばれていると、働く人達は長時間仲間であり続けるため、労働組合が企業別になります。これは、アメリカなどの労働組合と比較すると分かりやすいと思いますが日本だとブルーカラーもホワイトカラーも同じ組合に所属することになりますが、アメリカですと産業別や職業別に組織されることが多いです。
このように書いてみると、日本では当たり前だと思っているものが日本特有なものだということが分かります。ただ、最近では年功序列など崩れてきているものが出てきているもの事実です。
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参考文献
経営能力開発センター編『経営学検定試験公式テキスト<1>経営学の基本』(中央経済社)