日本の労働組合の基礎

 2月から3月にかけて日本では「春季生活闘争」と言われる企業と労働組合の交渉が話題にでます。春季生活闘争といわれてもピンと来ないかもしれませんが所謂「春闘」と呼ばれるものです。労働組合については前に日本型企業システムを書いた際にほんの少しだけ触れましたが、今回はその日本における労働組合の基礎的な部分を書いていこうと思います。

労働組合の目的

 日本では春闘がテレビや新聞などで取り上げられ、目にするすることがあるかもしれませんが、そもそも労働組合とは何でしょうか。労働組合法第1条で

「この法律は、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成することを目的とする。」

とし、第2条で

「労働組合とは労働者が主体となって、自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体及びその連合団体をいう。」

としています。このような条文だと難しく感じると思いますが、すごい簡単に言ってしまえば、労働組合を組織する目的は労働者が使用者と対等な立場で交渉できるようにすることです。
 第1条は法律の目的ですが、労働組合の活動を保護することを前提の法律と考えると労働組合の目的とほぼ一緒になるので書いておきました。

 ちなみに第2条は労働組合を結成するうえで、実はとても重要な条文で主体性(主体が労働者であること)、自主性(自主的に組織し、会社から独立していること)、目的性(政治運動や福利事業が主体ではないこと)、団体性(団体としての体裁を整えていること)の労働組合の4要件と言われる要件を満たしていないと労働組合法の保護を受けられなくなってしまいます。

労働組合と法律

 使用者からしたら労働組合は少し厄介な組織だと感じるかもしれません。ただ、労働組合は法律によって認められているものです。1番の根本にある法律は日本国憲法28条です。日本国憲法28条では

「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。」

とあります。この条文では労働者が労働組合を結成したり加入する「団結権」、その団体の代表者が使用者と交渉する「団体交渉権」、そしてストライキなどの争議行為をする「団体行動権(争議権)」を保障しており、この3つを合わせて「労働三権」と言ったりします。
 また、この労働三権に対応するため労働組合法と労働関係調整法を中心とする労使関係法令があります。

労働組合の機能

 労働組合法第2条の「労働条件の維持改善など経済的地位の向上」という目的達成のため、3つの機能があります。

1.要求機能
 労働組合は設定した目的のため、団体交渉の場面でその実現のために協議します。そして、どのように展開し妥協するかなど労働者の要求をもとに経営者側との交渉を重ね、目的を実現させます。

2.監視機能
 労働組合は経営状況などに関心をもち、実態を把握しておかなければなりません。そのことを通じて社会的観点、労働者の観点から監視します。そして、労働者や社会的に背反するようなことあれば、監視機能を発揮しなければなりません。

3.共済機能
 労働者の生活安定は経済情勢の変動する中で、労働者が相互に協力して共済機能をしたり、福祉充実のための活動を推進するなどの動きは、重要な機能となっています。

 共済機能については、もしかしたら第2条の4要件に引っかかると思ってしまうかもしれませんが、主たる目的ではなければ大丈夫なのだと思います。

日本の労働組合の組織形態

 労働組合の組織形態には3つあります。1つ目は職業別組合です。職業別組合の特徴は熟練工をにより供給を統制することによって、交渉力を発揮する方法です。2つ目は産業別組合です。同一産業に属する労働者を組合員とする労働組合んです。機械化により大量生産方式によって増加した半熟練・不熟練労働者を組織化する必要から誕生し、現在の欧米などの代表的な組合の組織形態です。そして3つ目が日本の代表的な企業別組合です。

 日本では企業別組合が代表的な組織形態と言えます。企業別組合の特徴として、職種など関係なく同じ組合になります。欧米などの産業別労働組合になると知的労働者などのホワイトカラーと呼ばれる労働者と肉体労働者などのブルーカラーと呼ばれる労働者などの職種の違いによって分けられます。
 このような違いが生まれる1つの原因として、日本型企業システムの特徴である終身雇用や年功序列の影響と考えられています。同じ人が同じところでずっと働くので企業別の労働組合の方が組織しやすいとなんとなくイメージしやすい感じがします。
 また、上部団体の関係では企業別組合が集まった産業レベル連合体があり、その連合体が集まったさらに大きい労働組合の連合体があります。国に要望を出したりするのはその労働組合の中でも最上部団体ですね。
 上部団体なども書きましたが、上部団体の助言などはあるものの基本的には使用者側と直接交渉するのは企業別労働組合の代表です。ただ、上部組織に加入することでその影響力があるのは間違いないと思います。

 労働組合についてもっと深く勉強しようとすると労使紛争などの問題や人的資源としての側面などを考えると色んなテーマがあると思いますが、ここで書いたのはあくまでも日本の労働組合にフォーカスして、なおかつ本当に基礎的な部分しか書いていませんが、会社とかで労働組合について話された時ぐらいにちょうど良い内容にはなっていると思います。

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参考文献
経営能力開発センター編『経営学検定試験公式テキスト<1>経営学の基本』(中央経済社)
・『初学者のための憲法学』(北樹出版)
伊丹敬之・加護野忠男著『ゼミナール経営学入門』(日本経済新聞社)