演繹的アプローチと帰納的アプローチ

 会計基準を決める時に、演繹的アプローチと帰納的アプローチがあります。今回はこの2つのアプローチの考え方について書いて行こうと思います。一応、ここでのアプローチの意味を簡単に書いておくと、どのような考え方で作っているか、みたいなことです。本当の意味は辞書で調べて下さい。
○演繹的アプローチ
 演繹的アプローチはトップダウン・アプローチなんていったりもします。演繹的アプローチは前提や目的を先に決めてから、色々な基準を作ることを言います。この方法で作った場合は、基本的に前提や目的があるので基準ごとに矛盾しない整合的な基準を作ることができます。しかし、実務では向いていな会計基準ができしまうこともあります。イメージ的に言えば、下の図のようになります。
この演繹的アプローチで作っているのは、中小企業に関する会計指針やIFRS(国際財務報告基準)などが、代表的な例といえるかもしれませんね。
○帰納的アプローチ
 帰納的アプローチはボトムアップ・アプローチといったりもします。帰納的アプローチは実務で実際に使われている会計処理などを観察して、その中から共通的なものや一般的なものを抽出して基準を作るものです。この作り方だと、その会計処理がすでに実務で広く普及しているので遵守されやすかったり、現実的ではない会計処理が作られることがないという利点があります。しかし、基準によって整合性が取れなかったり、新しい取引などがあった場合対応できないという問題点をあったりします。ちなみに、イメージ的には下の図のようになります。
この帰納的アプローチで作っているものは、日本の企業会計原則があります。これは、企業会計原則の前文に「企業会計の実務の中に慣習として発達したものの中から、一般に公正妥当と認められるところを要約したもの」と書いて書いてある通り、もろに帰納的アプローチと言えますね。この他にも、中小企業に関する基本要領などがありますし、もっといえば、各国独自で会計基準をもっているところの会計基準は、帰納的アプローチで作られてきています。
 ここからは余談になりますが、僕自身のゼミの卒論でやろうとしているものが、中小企業会計なんで、この2つのアプローチはけっこう重要になって来るんですよね。だから、中小企業会計に関する2つの名前を入れてみました。まぁ、簿記とか会計とかを勉強する時は大企業向けの会計なんでピンと来ないかもしれませんが・・・。ただ、日本の95%ぐらいは中小企業なので将来的には使えることを期待はしているんですが、微妙です・・・。
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参考文献

 桜井久勝 『財務会計論講義』、中央経済社

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