経営学におけるドメインというと「事業ドメイン」と「企業ドメイン」があると思いますが、今回は「企業ドメイン」について書いていこうと思います。まぁ、突然「企業ドメイン」っていっても分からないと思うのでいつも通り、企業ドメインとはなにかを簡単に書いてから、中身に入っていきたいと思います。
企業ドメインを簡単にいうと、企業の事業領域を定義していくことであると言えます。その領域は、将来的な事業や戦略の領域を含めて考えるものになります。そして、企業ドメインを定めることによって、企業の指針というか方向性というか、そんなものを決めることができ、方向性をしっかりしたうえで今後の戦略とかを考えることができるようになります。
最初に簡単に書いみましたが、まぁ、よく分からないかもしれませんね。私も無知でこれを読んだら、「なんのこっちゃ」って思うと思います。と、いうことで中身に入っていきましょう。
まず、企業ドメインの意義について考えてみましょう。
企業のドメインを考えることは、その企業のコンセプトを決定し、さらにはどのような分野でやっていくことかを決定することになります。つまり、事業領域を決定することになりますね。これを決めることによって、例えば、企業が多角化をする時の判断材料にもなります。「可能ならば、いろんな多角化をしてリスクの分散をする方が良いのでは?」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。ドメインを明確にしないと企業は方向性を見失ってしまいます。そして、経営資源の配分やこれから蓄積していくべき経営資源が明確にならなくなる可能性があります。こうなってしまうと、せっかく持っている強みなどを活かせなくなってしまうかもしれません。ユニクロだって、野菜事業をやって失敗していますしね。こんなことも頭に入れながら、ドメインを定義する意義を私の持っている本では3つに分けて考えているので、ここでも3つに分けて考えてみましょう。
まず1つ目は、「組織が意思決定をする際の指針を与えることができる。」と、いうことです。企業ドメインを決めないで考えてしまうと意思決定する際に浅く広い考えで決定しかねません。多様な変化が起こっている世の中で、浅く広い情報での意思決定は少し危険な感じがしますよね。しかし、事業領域を限定しいればその事業領域に対して深い情報をを収集することができ、適切な判断ができる可能性が高くなります。また、事業を展開していく時の指針にもなります。もし、企業ドメインがなければ方向性を見失ってしまい、一貫性のある意思決定ができなくなってしまいます。
2つ目は、「企業の経営資源の配分や蓄積に指針を与えることできる。」と、いうことです。企業ドメインで事業領域を限定することで、これからどのような経営資源が必要であるかを明らかにすることができ、さらには、その企業の強みをさらに強化できるようになります。これは、企業ドメインを限定することでその企業の方向性にあった経営資源の蓄積ができ、同時に配分が可能となるからです。
そして3つ目は、「組織に一体感をつくることができる。」と、いうことです。組織は、特に多角化か進んでいる組織は同じ組織であっても別々の組織で働いているような感覚を持ちます。実際に私は、人事異動で部門を異動した時に、あたかも転職したような感覚を持ちました。そのぐらい、企業風土が違ったのです。このような場合に、企業ドメインを定義しておくと、部門ごとにやっていることは違うかもしれないけど、同じ目標に向かって仕事していると思わせることができます。そして、事業間の協力や範囲の経済の実現を可能にしていきます。
これが企業ドメインを定義する意義です。次に、企業ドメインを定義する際のアプローチについて考えてみます。ドメインを定義するアプローチには3つあげることができます。これも順番に書いていきます。
まず1つ目は、機能による定義です。これは、現在行っている事業などでとらえるものです。その行っている事業が市場や社会に対してどのような機能をもたらしているかを考えて定義していきます。この場合、将来のどのような展開をしていくかを考え、潜在的ものも考えて広く考えることができるため戦略的な観点からは望ましいといえます。
例えば、レビットが1960年にハーバード・ビジネスレビュー詩に掲載した論文で、アメリカの鉄道会社の事業ドメインを「鉄道事業」と定義してしまったため、他の輸送手段への多角化の機会を逃してしまい、衰退してしまったという主張はよく知られています。もし、もうちょっと広く企業ドメインを定義していれば、多角化が成功していたかもしれません。
2つ目は市場と技術や能力によって定義するものです。市場に対して持っている技術や能力を活かし将来の発展の方向性をドメインとするものです。このアプローチで企業ドメインを定義するのは、最近では、市場が成熟化し、顧客の多様なニーズがあることから難しくなってきてます。例をあげるのであれば、松下電器が一時期標榜していた「ヒューマン・エレクトロニクス」はその1つと言えるかもしれません。
そして3つ目は、顧客層、顧客機能、技術にの3つにより定義するものです。これにエーベルによって提示されたもので、現在のアプローチ方法として普及しているものですね。これは、だれに(顧客層)、何を(顧客層)、どのように(技術)に提供するかという感じで定義していきます。これにより、戦略的にドメインを設定できる感じがしますね。
企業ドメインについてざっと書きましたが、正直、事業ドメインを考えるのは容易ではありません。広く事業領域を定義してしまうと方向性を見失ってしまい、適切な経営資源の蓄積や配分ができなくなってしまったり、逆に狭すぎるとアメリカの鉄道会社みたいに機会を逃してしまうかもしれません。
アプローチ方法も3つ書いてみましたが、現在では基本的に3つ目を使うのが一般的みたいです。ですので、今回も「企業ドメインの基礎」というタイトルをつけてみました。たぶん調べてみると3つ目のが多く出てくると思うので、このブログ読んでから他の調べてみると良いかもしれませんね。
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参考文献
・某大手通信教育講座中小企業診断士テキスト
・綱倉久永・新宅純二郎著『経営戦略入門』(日本経済新聞出版社)
・経営能力開発センター編『経営学検定試験公式テキスト<2>マネジメント』(中央経済社)
・伊丹敬之・加護野忠男著『ゼミナール経営学入門』(日本経済新聞社)